食中毒にご注意を!
暖かくなってきて、花粉のピークも過ぎて過ごしやすい時期になってきましたね。
ヒトにとって過ごしやすい季節です。
が・・過ごしやすいと感じているのは我々だけではありません。
気温や湿度が上がってくると細菌も繁殖しやすくなります。
そして細菌がついた食べ物を我々が食べると・・想像できますね。
今回はこれからの時期に注意すべき、食中毒についてお話します。
食中毒とは
細菌やウイルスが付いた食べ物を口にすることで健康被害が起こることを食中毒と言います。
主な症状は、胃腸炎(下痢、腹痛、嘔吐など)ですが、熱が出たり、全身がだるくなるなど、風邪のような症状の時もあります。
「飲食店などで〇〇菌による食中毒が集団発生〜」などのニュースをよく目にしますが、報じられないだけで、食中毒は家庭でも発生しています。
家での食中毒は症状が軽かったり、家族のうち全員には症状が出なかったりする場合もあるため、「これは食中毒だ」と気づかれないケースも少なくありません。
何が原因か、わからないことも多いです。
食中毒の原因と起こりやすい時期
食中毒の原因は細菌、ウイルス、自然毒(フグや貝、きのこなど)、化学物質(ヒスタミン)、寄生虫(アニサキスなど)に大きく分けられます。
どれも年間を通して発生する可能性がありますが、夏(6〜9月)頃、湿度や気温が高い時期は、細菌性の食中毒が発生しやすいです。
冬(12~3月)は、ノロウイルスなどのウイルス性の食中毒の発生が見られます。
また、春や秋には、他の時期に比べて自然毒による食中毒が多く発生します。
細菌性食中毒の症状
どの細菌でも必ず消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)が起こります。
下痢は水のようなしゃーっとしたもののことが多いですが、血便が出ることもあります。
感染した細菌の種類によっては38度以上の高熱を出すこともあります。
さて、ここからは日本に多い食中毒の原因菌にはどんなものがあるのか、何種類か説明していきます。
生焼けの鶏に要注意! カンピロバクター菌
カンピロバクター菌はニワトリ、ウシ等の家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌しています。
鶏肉からの感染が多く、食べてから2〜5日で発症します。
他の細菌性食中毒と比べて少ない菌量でも発症すること、潜伏期間が長いことが特徴です。
急な発熱と消化器症状が起こり、約半数で血便の症状が見られます。
下痢は1日10回以上が数日続くことが多く、脱水に注意が必要です。
症状がひどい場合は抗生剤で治療します。
大抵は数日で症状が落ち着きます。
稀に感染後1〜3週間で「ギランバレー症候群」という末梢神経の病気になることがあるので、治った後も注意が必要です。
卵の賞味期限は守って! サルモネラ菌
サルモネラ菌は、ヒトや家畜の腸管内、河川・下水など自然界に広く生息している細菌です。
卵やマヨネーズなどの卵製品での感染が多く、食べてから8〜48時間で発症します。
急な高熱と消化器症状が起こり、下痢は1日数回〜十数回、1週間以上続くこともあります。
症状がひどい場合は抗生剤で治療します。
子供や高齢の方では脱水症や菌血症(細菌が全身に回ること)など重症化することがあります。
生卵が原因のサルモネラ菌食中毒で子供が亡くなった例もあるので、特に賞味期限の切れた卵はよく加熱するようにしましょう。
魚介類に要注意! 腸炎ビブリオ
ビブリオ菌はあたたかい海水を好み、海水の温度が上がる夏の時期に活発に増殖して魚介類に付着します。
刺身や加熱不十分な魚介類からの感染が多く、食べてから3〜24時間で発症します。
他の細菌に比べ増殖スピードがとても早く、室温で魚介類を放置すると感染リスクが高まります。
真水や4℃以下では増力できず、熱に弱く通常の加熱調理で簡単に死滅します。
魚を調理したまな板や包丁などの調理器具はすぐによく洗うようにしましょう。
ピーク時は1日数回〜10回以上の下痢症状があり、熱が出ることもありますが、大半は数日で治ります。
カレーやスープの作り置きに注意! ウエルシュ菌
ウエルシュ菌は、ヒトや動物の腸管内、土壌、下水、 塵埃等自然界に広く生息しています。
食中毒を起こすのは食肉や魚介類が原因であることが多く、大鍋で調理されるカレー、スープ、チャーシュー、野菜の煮物(特に肉の入ったもの)などが数時間〜1晩室温で放置されている間に菌が増殖します。
熱に強い菌のため中途半端な加熱では死滅せず、逆に菌が増殖しやすい環境になるので注意が必要です。
食べてから6〜18時間ほどで腹痛と下痢の症状が起こります。
症状は軽く下痢は1日数回、熱が出ることはほとんどありません。
1〜2日で症状は落ち着きます。
おにぎりを汚い手で握らない! 黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌はヒトを取り巻く環境や各種の哺乳動物、鳥類等に広く生息しています。
特に人間の鼻や咽頭、腸に生息しており、ヒトの手や指を介して食品を汚染し、発生していると考えられています。
黄色ブドウ球菌が直接悪さをするわけではなく、増殖する時に作られるエンテロトキシンという毒素を摂取することによって起こる「毒素型」の食中毒です。
食べてから約3時間後に激しい吐き気・嘔吐、腹痛、下痢などの急激な胃腸炎症状が起こります。
症状はひどくても大抵は1日か2日で症状は落ち着きます。
他にもO157を代表とする腸管出血性大腸菌感染症や、セレウス菌など、いろいろな細菌が食中毒を起こすことが知られています。
腸管出血性大腸菌は別の重症な病気を合併することもあるので、機会があればまたコラムにしたいと思います。
食中毒予防の3原則
さてここからはこれからの時期、食中毒にならないために家庭で気を付けるポイントをお伝えします。
大きく3つ、食中毒の原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」ことです。
つけない
手にはさまざまな雑菌がついています。
食中毒の原因菌を食べ物に付けないように調理の際は必ず手を洗いましょう。
生肉や魚などから加熱しないで食べる野菜などへ細菌が付着しないように包丁・まな板を分けるなど、注意しましょう。
増やさない
食べ物に付いた細菌を増やさないために「低温」で保存することが重要です。
生肉や魚、調理した料理などは常温で放置せず、できるだけ早く冷蔵庫に入れましょう。
生魚など生で食べる物は、食べる直前に冷蔵庫から出すようにしましょう。
やっつける
多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。
中心部を75°Cで1分以上加熱することが目安です。
調理の際は食品を十分に加熱するようにしましょう。
表面だけではなく中心まで十分に加熱することもポイントです。
いかがでしたでしょうか。
腹痛や下痢症状が急に出た場合、ご家庭での食中毒が原因の場合が意外と多いです。
皆様もお気をつけて、ぜひ健康に夏を迎えましょう!
それでは、また。