メニュー

超高齢者の白内障手術

[2025.06.29]

みなさん、こんにちは。

 

今回は白内障についてです。

 

もう90歳になってしまったけれど、これから白内障の手術はアリ?ナシ?

 

訪問診療に絡めて、そんなお話をしたいと思います。

 

白内障・緑内障のイラスト

 

 

1. 白内障とは

まず白内障とは、眼の中にある「水晶体」といういわゆるレンズ部分が、加齢等により濁ってしまうことによって起こります。

 

水晶体はピント調節機能を担っており、水晶体が濁ってしまうと、眼の奥まで光が通りにくくなり、ピントが合わず、見え方にさまざまな支障が出ます。

 

 

かすみ

視界が白くかすんで見えるのが白内障の主な症状です。

 

ぼやけ

そのほか、ものがぼやけて2重・3重に見えることがあります。

 

光がまぶしい

ライトなど、強い光がまぶしく感じることがあります。

 

眩しい人のイラスト(男性)

 

基本的に痛みはなく、充血や目やになどは、白内障とは直接関係がないことが多いです。

 

白内障の原因としては、大半が加齢に伴うものですが、糖尿病外傷薬剤性先天性なども少ないながら報告されています。

 

日常生活に支障のない軽度の白内障の人も含めると、60代では約7割、70代で8〜9割、80代でほぼ全員が何らかの白内障を発症しています。

 

日本人においては、厚労省などの統計によると、70歳以上の約半数が生涯に1回は白内障手術を受けているという推計になっています。

 

 

 

2. 白内障の診断

どのように診断するか?ですが、基本的には眼科で診断を受ける必要があります。

 

顕微鏡で水晶体の透明度を確認し、視力検査眼底検査などとあわせて診断されます。

 

眼科の検査のイラスト(健康診断)

 

ここでは詳しく解説しませんが、高齢であればほとんど皆白内障ではあるわけですが、特に訪問診療で眼の症状だけで「あなたは白内障です」と診断するのは簡単ではありません。

 

ちゃんと診断を受けてちゃんと治療をしたいのであれば、がんばって眼科へ通院する必要があります。

 

それが難しければ、命に直結する病気でないこともあり、治療、特に手術加療は難しい、というのが実情です。

 

 

3. 白内障の治療

白内障を「治す」には、手術しかありません。

 

濁った水晶体を取り出し、そこに人工水晶体、つまり眼内レンズを挿入します。

 

 

見え方の症状が軽度であれば、点眼薬矯正眼鏡などを使うこともありますが、白内障は加齢によって進行していくものであり、それらでは白内障の進行を抑えることはできても、改善したり治したりすることはできません。

 

点眼には、白内障の起因となるキノイド物質の成長を抑え、水晶体が混濁化するのを防ぐピレノキシンや、白内障の進行に伴い減少する、水晶体の透明性を保つグルタチオンなどがあります。

 

目薬が苦手な人のイラスト(女性)

 

点眼や矯正眼鏡は主に白内障の初期に選択され、進行してくると失明する場合もあり、治すのであれば手術が必要になります。

 

当然手術は眼科医が担当し、自宅で訪問診療で行うことはできません。

 

 

4. 日帰り手術 vs 入院手術

医療技術の進歩により、手術自体は10-20分で終わることが多く、最近は眼科クリニック等で日帰り手術ができるようになっています。

 

高齢であったり、内科の持病が多数あったりする場合は、クリニックではなく病院での手術が望ましく、その場合は日帰りではなく入院での手術になります。

 

入院となると、手術部位はもちろんのこと、内科疾患など全身管理をしてもらえる一方で、超高齢者ではせん妄のリスクが伴うほか、数日ベッドで寝かされているだけでも筋力が落ちてしまうため、数日間入院しただけでも体力、ADLを落としてしまう原因になることがあります。

 

薬を吐き出すお年寄りのイラスト

 

高齢になると、一概に手術を受ける本人や家族の希望だけで日帰りか入院かを決めることはできず、担当医師の意見も聞き、相談して決める必要があります。

 

 

5. 手術を受けるべきかどうか?

まず前提として、濁った水晶体を手術で取り替えることはできても、それによって乱視や近視、老眼が治るわけではありません。

 

眼科で診断されると思いますが、今の見えづらい原因がすべて白内障のせいではない可能性が高いです。

 

虫眼鏡で本を読むお年寄りのイラスト

 

その上で、少しでも見え方が改善したほうがいいのであれば手術を受けたらいいと思います。

 

新しく入れた人工水晶体(眼内レンズ)は基本的に劣化することはないため、一度交換したらそれで治療完了です。

 

超高齢者では?

さてでは、90歳を超えて訪問診療を受けているような患者さんではどうでしょう?

 

手術を受けた方がいいか、明確に線引きするのは簡単ではありません。

 

ただ、一つの目安としては、

 

・家の中ではなんとか自分のことは自分でできているような人

・認知症がそこまで進んでおらず白内障のことをある程度理解できる人

 

の場合、超高齢であっても手術を受ける価値は十分にあると思います。

 

一方で、

 

・寝たきりやそれに近い人

・介護度が高く自宅でさまざまな介護サービスを受け生活している人

・認知症が進んでおり白内障など自分の病状が十分理解できない人

 

などは、手術や入院に伴うリスクが高く、手術は積極的にお勧めはできません。

 

介護疲れのイラスト

 

生涯で約50%の人が白内障の手術を受けると言われていますが、超高齢になってからの手術はリスクが伴います。

 

「ある程度見え方が改善する」というメリットと、手術や入院に伴う負担やリスクとを天秤にかけて決めるのがよいでしょう。

 

天秤のイラスト(分銅)

 

 

6. 最後に

白内障について、その治療や、手術を受けた方がいいかどうか、など解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

眼のほかの内臓たちと一緒で、一つの臓器、器官です。

 

加齢ととにも老化していきます。

 

耳の加齢=難聴もそうですが、超高齢になってくると、聞こえなくてもいいことが増えてきたから聞こえなくなってくるんだ、見えなくてもいいことが増えてきたから見えなくなってくるんだ、もうこれ以上成長する必要がなくなってきたから食欲が落ちてくるんだ、という考え方もまたあながち間違いではないと思います。

 

耳の遠いお爺さんのイラスト

 

見えづらいことはストレスではあるかもしれませんが、痛みや苦しみを伴うわけではありませんので、超高齢になったのであれば、これもまた加齢による自然な流れ、生理現象だと考え、手術を受けずにそのままにしておくのも一案です。

 

ただし、転ばないようにはくれぐれも気をつけてくださいね。

 

 

それでは、また。

 

 

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME