帯状疱疹とワクチン
帯状疱疹のワクチンが今年、2025年から定期接種になったことをご存知でしょうか?
そもそも、帯状疱疹とはどんなものなのでしょうか?
ワクチンはどんな人が打ったらいいのでしょうか?
今回の内容は、ワクチンを接種した方がいいのかお悩みの方に是非読んでいただきたいです。
帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」による感染症のことです。
よく「帯状疱疹の人から帯状疱疹がうつるんですか?」と聞かれることがありますが、実際はそうではありません。
このウイルスは非常に感染力が強いため、多くの場合、皆子供の時に一度感染しています。
感染すると「水ぼうそう(水痘)」として発症します。
水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏しています(いなくならないのです。)
そして、加齢やストレス、疲れなどで免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが元気になり、神経から出てきて皮膚に症状を起こします。
これを「帯状疱疹」といいます。
60歳以上では、生涯で約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。
年齢が上がるにつれてさらに発症リスクは高くなり、80歳までに約半数が発症するとも言われています。
帯状疱疹の症状・治療
帯状疱疹になると、最初にかゆみや皮膚の違和感、ピリピリとした痛み、しびれを感じます。
その後、数日して発疹が出てきます。
発疹は、はじめは赤い斑点や小さな盛り上がりで、その後水ぶくれになり、広がっていきます。
痛みはだんだん強くなり、「焼けるような」「刺すような」痛みに変わっていきます。
頭痛や発熱、だるさなどが起こる場合もあります。
水ぶくれは2週間ほどでかさぶたになり、約1ヵ月で正常の皮膚に戻ります。
水ぶくれや痛みはウイルスが潜んでいる神経の流れに沿って帯状に現れます。
体の左右どちらか、多くは上半身にみられることが多いです。
通常は生涯に一度しか発症しませんが、免疫が低下している場合には再発することもあります。
治療は抗ウイルス薬です。
軽症の場合には、飲み薬の抗ウイルス薬で治療します。
重症の場合や免疫力が落ちている場合には、入院して点滴での治療を行うこともあります。
帯状疱疹の後遺症
帯状疱疹が治った後も後遺症に悩まされることがあります。
普通、痛みはだんだんと軽くなるのですが、「焼けるような」「針で刺されたような」「ズキズキとした」痛みが、水ぶくれが治った後も続くことがあります。
これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。
帯状疱疹を発症した50歳以上の患者さんの約2割が神経痛を起こすと報告されています。
治療は、痛み止めなどの薬を中心に、神経ブロックや理学療法などを組み合わせて行います。
しかし痛みを完全に取り除くのは難しく、また治療は長期にわたります。
他にも目や耳の神経が傷つけられた場合は、視力の低下や難聴を引き起こすことがあります。
後遺症を残さないためにも、できるだけ早く治療を始めて、ウイルスを抑えることが大切です。
帯状疱疹ワクチンとは
日本では2種類のワクチンが接種可能で、生ワクチン(ビケン)と不活化ワクチン(シングリックス)があります。
それぞれの特徴を説明します。
生ワクチン(ビケン)
ウイルスを弱毒化したワクチンです。
接種回数は1回です。
60歳以上で50%ほどの効果があり、接種から5年たっても4割程度の予防効果があるとされます。
「生」ワクチンのため、妊婦や免疫の下がっている人は接種できません。
不活化ワクチン(シングリックス)
ウイルスの一部と、免疫の働きを高める物質が混合されたワクチンです。
接種回数は2回です。
2か月以上空けて2回の接種をします。
50歳以上で97.2%の予防効果があり、接種から5年たっても9割程度、10年たっても7割程度の予防効果があるとされます。
免疫の状態にかかわらず接種できます。
注射後の副反応は生ワクチンに比べて強く出ることが多く、生ワクチン(ビケン)より高価です。
いずれのワクチンも注射部の痛みや腫れ、発赤、かゆみ、アナフィラキシーなどの副反応が起こることがあります。
発症抑制や帯状疱疹後神経痛のより高い予防効果を期待するならシングリックスが、1回接種で済む利便性と費用面を重視するならビケンがおすすめです。
帯状疱疹ワクチン定期接種化について
2025年4月から、65歳の方を対象に帯状疱疹ワクチンが定期接種化されました。
また、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も定期接種の対象となります。
さらに100歳以上の人や、HIVなどに感染し免疫機能が落ちている60歳から64歳の人も対象になっています。
松戸市では生ワクチン(ビケン)で2,500円/回、不活化ワクチン(シングリックス)で6,500円/回の自己負担で接種可能です。
対象の方は原則、市から接種予診票がきますのでご確認をお願いします。
また、各自治体によって違いがありますが、50歳以上の人も任意接種という形で自治体からの助成を受けて接種することができます。
松戸市の場合は50歳、55歳、60歳の方にも2,000-5,000円/回の助成金が出ます。
任意接種の場合は予診票を松戸市予防衛生課窓口または各支所の市民健康相談室で受け取る必要があります。
ワクチンを打った方がいいかどうか
訪問診療に携わっていると、帯状疱疹後神経痛で悩んでいる方をたびたび見かけます。
また、水ぶくれの跡にアザやへこみなどが残ってしまう方もいます。
発症する場所によっては失明や難聴になるリスクもあります。
総合的に考えると、一般的には任意接種で接種しなくてもよいとは思いますが、定期接種としてお知らせを受け取ったら接種するようにしたほうがよいのではないかと思います。
金銭的負担が大丈夫なら、効果がより高い不活化ワクチン(シングリックス)のほうがよいでしょう。
まとめ
本日のまとめです。
帯状疱疹とは、昔「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」に感染した人の中に潜んでいるウイルスが、加齢やストレス、疲れなどで免疫力が低下するタイミングで元気になり、症状を起こす病気です。
かゆみや皮膚の違和感からはじまり、数日して発疹が出てきます。
水ぶくれは2週間ほどでかさぶたになり、約1ヵ月で正常の皮膚に戻りますが、帯状疱疹後神経痛や難聴、失明などの後遺症が続くこともあります。
2025年4月より65歳の方を対象に帯状疱疹ワクチンが定期接種化されており、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も定期接種の対象となります。
自治体から定期接種のお知らせを受け取ったら、接種を検討ください。
当院は指定医療機関ではありませんが、所定の手続きを踏んで(患者さんにも協力いただき)、希望者に接種を行っています。
いかがでしたでしょうか?
2025年4月から定期接種化されたホットな話題かと思い、解説させていただきました。
参考になりますと幸いです。
松戸市のこちらのリンクもご覧ください。
それでは、また。