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健診で尿蛋白が見つかったら

[2023.11.19]

突然ですが皆様、健康診断はもうお済みでしょうか。

 

病気の早期発見・早期治療に有用な健康診断、人によっては松戸市からの助成もありますので今年度分がまだ、という方はぜひお早めに受診をご検討ください。

 

時折、健診を受けられた方で「尿蛋白が陽性になったがどうしたらいいのか」とご相談をいただくことがあります。

 

今回は尿蛋白についてお話します。

尿検査のイラスト(健康診断)

 

尿蛋白とは何か?

尿蛋白とは名前の通り、様々な理由で尿から蛋白質が出ている状態です。

 

健康な人の尿にもごく微量に蛋白質が含まれるものの、尿蛋白はほとんど検出されません。

 

蛋白尿は「24時間あたり150mg以上の蛋白が尿中に排泄されている状態」と定義され、病気が隠れている可能性があります。

 

健診での尿チェックは尿試験紙により色の濃度で(+)や(−)を判定する「尿定性検査」が主で、具体的に蛋白がどのくらい出ているかを知ることはできません。

 

そのため、健診で尿蛋白が出た場合には、2023年に改訂されたCKD(慢性腎臓病)ガイドラインに従い「尿蛋白が(1+)以上、もしくは2年連続で尿蛋白(+/-)が出た場合」には医療機関を受診し精密検査を受けるのが望ましいでしょう。

 

蛋白尿が出る病気において、尿蛋白が多ければ多いほど、その後の治療経過が悪くなったり、末期腎不全・透析が必要になってしまうケースが増えていきます。

人工透析のイラスト

 

また、症状がないからと放っておくと、どんどん状態が悪くなってしまうこともあります。

 

一般的に、腎臓の機能は一度悪くなるとなかなか元には戻りづらく、進行することが多いです。

 

そのため蛋白尿が陽性となった場合は、そこに病気が隠れていないかを早く見つけて治療することが大切です。

 

さらに、蛋白尿は血管障害や動脈硬化のリスク要因としても知られています。

 

尿蛋白陽性を放っておいたばかりに突然、脳梗塞や心筋梗塞を発症するという最悪のケースもあり得るということです。

胸が痛い人のイラスト(女性)

 

なぜ尿蛋白が陽性になるのか?

蛋白質は体に必要な物質であるので通常腎臓からはほとんどろ過されず、ろ過されたものも再び体内に戻されます。

 

ところが何らかの原因により腎臓が正しく機能していないと、蛋白質が大量にろ過されてしまったり、体内に戻されるはずの蛋白質が尿の中に混じって外に出されてしまいます。

 

これが尿に蛋白質が出る原因です。

 

ただ、尿蛋白が陽性だからと言って必ずしも病気とは限りません。

 

過激な運動、発熱、ストレス、月経、蛋白質の過剰摂取などによって一時的に蛋白尿が出ることもあります。

ストレスを抱えている人のイラスト(男性)

 

特に若い人で尿蛋白が陽性となって、こうした要因に心当たりがある場合は、いったん期間を置いてから再検査してみるのがよいでしょう。

 

 

蛋白尿に伴う症状

尿蛋白の量が多くなってくると、尿が泡立つ尿に細かい泡が見える尿の泡が1分たっても消えないなど尿に変化が見られます。

 

また、蛋白尿がきわめて多量に出るネフローゼ症候群という状態になると、足のむくみ(浮腫)や胸水、腹水などが見られることがあります。

むくみを気にする女性のイラスト

 

尿蛋白が出る主な病気

蛋白尿が出る原因としては、腎臓由来のものだと、慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)・糖尿病性腎症腎硬化症(高血圧性腎症)が多いです。

 

他にも全身の病気(膠原病)や血液の病気(多発性骨髄腫など)で、異常な蛋白が体の中で作られた結果、蛋白尿が現れることもあります。

 

尿路感染症でも蛋白尿が出ることがあります。

 

それぞれの疾患の説明、特に腎臓由来の病気については長くなってしまうので、またの機会でご説明させていただきます。

 

 

健診の検尿での注意点

健診の際、「朝一番の尿をとってきてください」と指示があることもあります。

 

なぜ朝一番なのだろう?と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

 

これは、起きてしばらく経ってからの尿には蛋白尿が出るが早朝第一尿では尿蛋白が出ない「起立性蛋白尿」や「運動後蛋白尿」の場合があるからです。

 

この場合はあまり問題にならないことが多いです。

 

 

尿蛋白の精密検査

尿蛋白は、「蛋白尿が持続して出ている」ことが問題なので、精密検査では「本当に蛋白尿が連続して出ているのか」を何回か調べていくことになります。

 

また、蛋白尿だけでなく「血尿や他の検査異常はないか?」なども合わせて調べていきます。

 

※一時的な蛋白尿をくり返す場合は、軽度の腎臓の病気があってどこかのタイミングで持続する蛋白尿に移行することもあるので、病院や健診で定期的にフォローするなど、経過観察が必要です。

 

再検査でも陽性で、起立性蛋白尿でもない場合、試験紙を用いる「尿定性検査」だけでなく「尿生化学検査」も組み合わせていきます。

 

「尿生化学検査」では、尿中の蛋白質やクレアチニン、電解質、糖などの量をより詳しく調べることができます。

 

体格によって誤差は出るのですが、この検査によって尿蛋白がだいたい1日何g出ているのかが分かります。

 

もっと正確な検査は「24時間蓄尿検査」となるのですが、この検査は自宅での尿を溜めていただくなどの手間がかかるので(症例ごとの判断となりますが)初回の検査で行うことはあまりありません。

 

そのほか腎臓の病気を疑うポイントとしては「尿潜血陽性ではないか」というところもポイントとなります。

 

尿潜血陽性→血尿が出ている可能性があるということです。

 

1日0.5g以上の蛋白尿が出る場合や、尿蛋白に加えて血尿も出ている場合には腎臓の病気が隠れている可能性が高いため、更なる精密検査のために腎臓内科専門医への相談が望ましいと言われています。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

軽度の尿蛋白だと自覚症状がないもしくは、泡立ちなど尿の異常所見に自分では気がづかない場合があります。

 

前述したように、尿蛋白を放っておくと腎臓がどんどん悪くなってしまい取り返しのつかないことになったり、脳梗塞や心筋梗塞を発症することにも繋がっていきます。

 

健診を受ける、そして尿蛋白に限らず何か異常が出た場合には速やかに精密検査を受ける、これに尽きます。

検尿コップのイラスト

 

今後のコラムで尿潜血についてもお話しようと思います。

 

それでは、また。

 

 

 

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