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高齢者の頭部外傷 〜「軽くぶつけただけ」でも油断は禁物〜

[2026.08.16]

みなさま、こんにちは。

 

はじめに、この度の熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

 

まだまだ予断を許さない状況が続いていると聞きますが、被災された皆さまの安全と被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

 

さて、今回は高齢者の転倒・頭部外傷についてです。

 

高齢者が頭を打つとどんなことが起こるでしょうか?というお話です。

 

躓いたお婆さんのイラスト

 

 

高齢者の頭部外傷の特徴

「頭部外傷」と聞くと、交通事故や高いところからの転落などが思い浮かぶかもしれません。

 

しかし高齢者では、歩行中や家の中での転倒、壁に頭をぶつけての打撲など、日常生活の中で起こる外傷が多いことが特徴です。

 

もともと足腰が弱く、バランス感覚の乏しくなった高齢者では転倒が起こりやすい状況にあります。

 

血圧の薬による血圧低下や睡眠薬の使用などもふらつきを起こしやすく、転倒の原因になるでしょう。

 

転んだ時にとっさに受け身が取れず、強い衝撃が直接脳に加わってしまう可能性も、若い人に比べると高いです。

 

 

直後は大丈夫であっても、心臓の病気などで血液をサラサラにする薬を服用している場合は血が止まりにくく、じわじわと出血を起こす可能性などもあります。

 

このように高齢者の頭部外傷は、軽くぶつけただけに見えても重症化しやすく、しかも症状が遅れて出てくる可能性もあるので長い期間のフォローアップが必要、という特徴があります。

 

 

転倒を起こしやすい状態とは?

少し頭部外傷から離れて、高齢者の転倒についてお話しします。

 

転倒を起こしやすい状態は、体に原因がある場合(内的要因)と環境が原因である場合(外的要因)の2つに分けられます。

 

まずは内的要因についてですが、ざっと以下のようなものがあります。

 

加齢による体の状態の変化

・力が弱くなる

・バランスが悪くなる

・目や耳が悪くなる

・感覚が鈍くなる など

 

 

病気

・脳血管疾患(脳卒中など)

・認知症・パーキンソン病

・不整脈や心不全・起立性低血圧(立ち上がった時に血圧が下がる状態)

・膝や腰の関節症・圧迫骨折・頚椎症 など

 

・服用している薬の数や種類

 

一方、外的要因とは以下のようなものです。

 

・床の段差や障害物(延長コードなどは足を引っ掛けやすい)

・履いているもの(かかとの隠れない履き物は脱げやすい)

・部屋の暗さ

・階段や玄関の手すりの有無

・坂 など

 

 

転倒はこの内的要因と外的要因がいくつも重なり合ったときに起こることがほとんどです。

 

 

転ばないためには?

内的要因は改善できないことも多いため、まずは生活環境を整える(外的要因を少なくする)ことが重要です。

 

・つまずかないように、電化製品のコードを短くまとめる

・脱げやすいスリッパやサンダルはなるべく控える

・室内で暗い場所を通る機会を減らす(足元ランプなどを使う)

・めくれやすいカーペットの下にはすべり止めを敷いておく

・つまずきやすいカーペットやこたつ布団の使用は控える

・床に物を置かず、部屋を整理整頓する

 

 

あくまで一例ですが、ぜひ一度ご家庭の室内を確認してみてください。

 

その他、お薬については服用を止めたり量を減らせば、比較的短期間で転びやすい状態ではなくなる場合もあります。

 

かかりつけ医に相談してみましょう。

 

また、転倒予防の運動を日常的に取り入れることも有効です。

 

家の中でもできる運動が、ロコモーショントレーニング(ロコトレ)として紹介されていますのでぜひ参考にしてみてください。

 

 

頭をぶつけた後、すぐに受診した方が良い場合

頭部外傷のお話に戻ります。

 

頭を打った後に、

 

・時間の経過とともに耐え難い激しい頭痛になる

・何度も繰り返し噴水のように吐く

・けいれんする

・手足の麻痺やしびれがある

・呂律が回らない、つじつまの合わない言動をする

・頭がへこんでいる(頭蓋骨の骨折の可能性がある)

 

 

こういった症状がある場合は速やかに医療機関の受診が必要です。

 

頭の中に血腫(血のかたまり)や出血がある可能性があります。

 

CTやMRIなどの画像検査を行い、緊急性の高い状態でないか確認します。

 

 

しばらく経ってこんな症状が出たら要注意〜慢性硬膜下血腫〜

頭をぶつけた直後は問題がなかったとしても、脳を覆う硬膜と脳との間にじわじわと出血がたまり、脳が圧迫されることにより病気を発症することがあります。

 

これを慢性硬膜下血腫といいます。

 

 

発症まで2〜6週間かかることもあり、本人や家族が頭をぶつけたことを覚えていないことも少なくありません。

 

頭痛や軽い運動麻痺が多く、ふらつきや歩いていてどちらかに傾いてしまうなどの症状が起こります。

 

認知症性格変化などでみつかることもあります。

 

長期間放置して血腫量が非常に増えた場合は脳を強く圧迫し、意識がなくなったり、最悪の場合は呼吸が止まり命に危険が及ぶこともあります。

 

軽いものは経過観察となりますが、血腫が大きい場合は血腫を取り除く手術を行います。

 

 

意外と起こる、脳震盪

頭をぶつけた後、なんだかおかしい、でも画像検査で問題がない。

 

それを「脳震盪」と言います。

 

脳震盪は、診察でも、CT・MRI検査でもわからない、唯一の外傷の病態です。

 

頭をぶつけたことで、脳に傷がなくても脳の機能が低下している状態です。

 

 

脳震盪は様々な症状を起こします。

 

・ぼーっとする

・モヤモヤと霧の中にいるような感覚(Foggy feeling)

・頭痛、めまい

・吐き気、ふらつき

・集中力の低下、光や音への過敏性

 

これらが一般的な症状です。

 

ひどい場合は一時的に記憶がなくなることもあります(健忘症状)。

 

物忘れをしたお爺さんのイラスト(認知症)

 

基本的には経過観察(時間経過のみが解決する)となりますが、高齢者の場合は「脳震盪かも」と思っていると別の病気が隠れている場合もあります。

 

検査で問題なかったとしても症状が長引く場合は期間をおいてもう一度医療機関を受診することをお勧めします。

 

また脳震盪を起こした後数日以内に再度脳震盪を起こすと脳浮腫(脳のむくみ)が起こりやすくなると言われています(セカンドインパクト症候群)。

 

頭をぶつけた後しばらくは安静にするようにしましょう。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

転んだ拍子に頭をぶつけることはよくあることかと思いますが、「いつものことだから大丈夫」、と思わないようにしましょう。

 

本人は自分がおかしいことに気が付いていないことも多いので、特に家族や支援者の方々が気をつけて様子を見てあげてください。

 

以上、先日プールで足を滑らせて脳震盪を起こした院長からでした。

 

 

 

それでは、また。

 

 

 

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