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高齢者の味覚異常〜低亜鉛血症が原因!?〜

[2025.07.30]

みなさん、こんにちは。

 

今日は、低亜鉛血症と味覚異常についてお話しします。

 

何のことか、ピンときませんね。

 

訪問診療をしていると、高齢者でたびたび「味がしない」「食事がまずい」などの症状を訴え、それによって「食欲がない」「食が進まない」という人がいます。

 

食欲のないお年寄りのイラスト

 

「もう90歳だからねえ」という返答になりがちですが、中には低亜鉛血症に伴う味覚異常が原因のことがあります。

 

亜鉛は金属類ですが、ミネラルやビタミン、銅などと同じく、食事から摂取されることで血液中にある程度存在しています。

 

その量が減ってきてしまうと、味覚に異常をきたすことがあるのです。

 

詳しく解説していきます。

 

味覚異常のイラスト

 

 

味覚と亜鉛の関係

味覚は、私たちが「おいしい」と感じて食事を楽しむために欠かせない感覚です。

 

この味覚を支える重要な栄養素のひとつが「亜鉛」です。

 

亜鉛は、舌にある「味蕾(みらい)」という味を感じる細胞の働きに深く関わっています。

 

いろいろな形の舌のイラスト(通常)

 

味蕾の細胞はおよそ10〜14日で新しく生まれ変わりますが、この再生過程に亜鉛が必要不可欠です。

 

亜鉛が不足すると、味蕾の新陳代謝がうまくいかず、味を感じる能力が低下してしまいます。

 

また、亜鉛は「味覚を脳に伝える神経の働き」にも関与しています。

 

 

つまり、亜鉛が不足すると、「味を感じにくい」「何を食べても同じ味」「苦みや金属のような味がする」といった異常が起こる可能性があります。

 

このように、亜鉛は単なるミネラルではなく、味覚を保つために重要な役割を果たしているのです。

 

 

低亜鉛血症の原因

低亜鉛血症は、血液中の亜鉛濃度が低下し、体内の亜鉛が不足した状態を指します。

 

実は、70歳以上のおよそ4人に1人以上に低亜鉛血症がみられることが分かっており、そのうち半数弱が低亜鉛血症が味覚障害の原因であると言われています。

 

 

ではなぜ低亜鉛血症になるかというと、亜鉛の摂取不足吸収不良のほか、需要の増加、過剰な排泄などが原因として挙げられます。

 

摂取不足

高齢になると、食事量が低下したり、偏食が進んだりします。

 

亜鉛はおもに肉など動物性タンパクの多い食事に含まれますが、その摂取量が減ると、亜鉛の摂取不足になります。

 

吸収不良

乳児に特有の疾患などもありますが、高齢者では肝臓や腎臓の病気糖尿病などがあると、腸からの吸収が阻害され、低亜鉛血症をきたすことがあります。

 

また、普段内服している胃薬など特定の薬剤が亜鉛の吸収を抑制することもあります。

 

そのほか、高齢になると、亜鉛などの微量元素を体に取り込む力がそもそも弱くなるといった要因もあります。

 

需要の増加

例えば悪性腫瘍自己免疫疾患、結核を代表とする慢性感染症など、全身性の慢性炎症状態によって、体内の亜鉛の需要が増加すると言われています。

 

 

低亜鉛血症による症状

低亜鉛血症になると、どんな症状が出るでしょうか?

 

味覚障害のほかにも、さまざまな症状があります。

 

皮膚や粘膜の異常

皮膚の乾燥や湿疹ただれや、口内炎創傷治癒の遅延などが起こるほか、爪の変形や、かけやすくもろいといった症状が出ることもあります。

 

口内炎のイラスト

 

脱毛

髪の毛が細くなったり、抜けやすくなったりすることがあります。

 

抗がん剤による脱毛のイラスト

 

貧血

低亜鉛血症によって貧血が起こり、それが進行すると、倦怠感ふらつきなどの症状が出ます。

 

貧血のイラスト

 

骨粗鬆症

骨の形成が抑制されることで骨密度が低下し、骨粗鬆症のリスクが高まると言われています。

 

骨粗しょう症のイラスト

 

易感染性

亜鉛は免疫機能を支える必須ミネラルのため、亜鉛不足により感染に対する抵抗力が下がることがあり、具体的には、風邪や肺炎などの感染症にかかりやすくなったり、治りが遅くなったりします。

 

 

味覚障害のそのほかの原因

余談ですが、味覚障害があるからといって、必ず低亜鉛血症が原因であるとは限りません。

 

血液検査で亜鉛低値があれば、それを治療すれば味覚障害が改善する可能性がありますが、味覚障害をきたす以下のようなほかの原因も考慮する必要があります。

 

・薬剤性(胃薬、抗うつ薬、降圧薬など)

・口腔乾燥症(ドライマウス)

・鉄・銅などほかの微量元素不足

・神経障害(脳血管障害など)

・精神的要因やうつ病

・加齢による味蕾や神経の機能低下

 

 

低亜鉛血症の治療

治療としては、食事療法と、内服治療の二つです。

 

食事から亜鉛が十分摂れればそれに越したことはありません。

 

しかし厚労省によると、1日で10mg程度の亜鉛を摂取することが推奨されており、これは牛肉で1日500g程度になります。

 

パックに入ったお肉のイラスト

 

特に、若い頃と比べて食欲・食事量が落ちている高齢者にとって、この量はあまり現実的とは言えません。

 

亜鉛サプリメントもありますが、処方薬だとノベルジンや、新しい内服薬であるジンタスなどがあります。

 

亜鉛の摂りすぎもよくありませんので、医師に相談し、適宜血液検査をみながら、内服量の調整をしてもらいましょう。

 

 

食事でできる予防と対策

亜鉛が多く含まれる食事には、以下のようなものがあります。

 

魚介類:牡蠣、うなぎ、サバ、アジ

肉類:牛肉、レバー、鶏もも肉

野菜類:切り干し大根、枝豆、たけのこ

大豆製品:納豆、豆腐、きなこ

・そのほか:アーモンド、ごま、玄米など

 

 

一方で、以下のような食習慣は亜鉛の吸収を妨げる可能性があります。

 

緑茶・コーヒーの過剰摂取:タンニンが亜鉛と結合して吸収を妨げる

食物繊維のとりすぎ:フィチン酸が亜鉛の吸収を阻害する

インスタント食品中心の食生活:ミネラルが少ない

 

高齢者で「お茶ばかり飲んで食が細い」「雑穀だけで野菜中心」というケースは、健康的に見えても亜鉛不足のリスクがあるため注意が必要です。

 

低亜鉛血症のある高齢者では、上記のような食品が多く摂取できるように、食べやすく調理を工夫してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

亜鉛と味覚障害について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

 

身体の仕組みは複雑で、当然、亜鉛のことだけ気にしていてもしょうがないのですが、深掘ってみるとこれだけの内容になります。

 

高齢者で味覚障害があれば、低亜鉛血症の関与を疑って検査をしてもらうのも一案です。

 

内服治療により味覚が改善すると、またしっかり食事が摂れるようになるケースもあります。

 

参考になりましたら幸いです。

 

 

それでは、また。

 

 

 

 

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