高齢者の下腿浮腫
みなさん、こんにちは。
早いものでもう1年が終わりますね。
今年もお世話になりました(お読みいただきありがとうございました。)
博士号取得、分院(三郷院)開院、看護師が仲間に加わったこと、祖父とのお別れなど、今年も色々なことがありました。
来年も元気に、在宅医療に携わっていきたいと思います。
さて、今年最後のトピックは、「高齢者の浮腫」です。
訪問診療をしていると、足が浮腫んでいる患者さんに高頻度で遭遇します。
気にされている方もいれば、昔からこんなんだからとほとんど気にされない方もいます。
高齢者の下腿浮腫は何が原因なのか?対処法はあるのか?そんな疑問にお答えしていきたいと思います。
下腿浮腫とは
まず下腿浮腫とは、膝から足首までの下肢(すねやふくらはぎ)に余分な水分が溜まって腫れている状態のことをいいます。
靴下の痕がつくのがその一つの目安で、指で押すと凹み、痕がつくものとつかないものがあります。
また、特に高齢者においては、加齢からくるものと、そうでないもの(つまり何らかの病気からくるもの)に分けられます。
具体的な統計的な数値を出すのは難しく、年齢にもよりますが、体感としては半々ぐらいな気がします。
加齢からくる下腿浮腫
加齢からくる下腿浮腫では、以下3つほど原因があります。
① 下肢の静脈のうっ滞
② 廃用症候群・下肢筋肉のポンプ機能低下
③ 低栄養
身体の中では、水分がたえず移動しています。
水分は主に血流に乗って、下肢から心臓のほうへ移動していきます。
また、下肢の静脈の周囲にある筋肉がポンプの機能を果たしており、それによって血液が、重力に逆らって心臓へと向かいます。
①と②はある意味、重複している部分もありますが、加齢によって、筋力が低下したり静脈の弁の機能が低下したりするほか、ADLの低下に伴って、若いときほど血液が全身をよく循環しなくなるため、水分を含む血液が、足のほうに溜まってしまうのです。
血管の中はある程度、血液を溜めておける容量が決まっているため、それを超えると、血管の外に水分が漏れ出し、「間質」というところに水分が溜まってしまいます。
これらは病気と言えなくもないですが、基本的には加齢による生理現象です。
そして、加齢によって当然、若いときほどの食欲がなくなってきます。

ある程度食べられている方は、血液中のアルブミン値がまだ低下しておらず、下腿浮腫は出ませんが、血中アルブミン値が下がってくるほど食事量が少なくなってきてしまうと、それによって下腿浮腫が生じます。
これも病気というより、生理現象の範囲と考えます。
病気からくる下腿浮腫
① 心不全
② 腎不全
③ 肝不全
④ 甲状腺機能低下症
⑤ 深部静脈血栓症
⑥ 薬剤性
メジャーどころではざっとこれぐらいの原因が考えられます。
それぞれ簡単に解説していきます。
① 心不全
心臓のポンプ機能が低下することにより、下肢に血流・水分がうっ滞してしまいます。

高齢者の場合、あまり食べられていないのに、体重が何キロも増加しているといった場合には、まず心不全を疑います。
一口に心不全といっても、心筋梗塞や弁膜症、不整脈など、その原因は様々です。
心不全の原因によって治療法は変わりますが、訪問診療を受ける高齢者にとっては、心臓の手術やカテーテル治療を受けるのは難しいことが多いです。
そのため、心筋梗塞による痛みが取れない、などということでなければ、主には「利尿剤」といって体内の余分な水分を尿として排出するのを助けるお薬を使います。
心不全になると、肺にも水が溜まりやすく、場合によっては息苦しさが生じます。
必要に応じて、麻薬や酸素を使うこともあります。

② 腎不全
腎臓は尿を作り出す臓器で、腰のところに左右1つずつ、合計2つあります。
腎臓の機能が悪くなると、尿を十分に作り出せず、身体の中に余分な水分が貯留してしまいます。

一度悪くなった腎臓の機能を良くすることは簡単ではなく、心不全と同様、利尿剤により体液調整(余分な水分を尿として除去する)を行うことになります。
血液検査で腎臓の数値を見れば、腎不全が原因かどうかが簡易的にわかります。
③ 肝不全
高齢者の浮腫の原因として多いものではありませんが、アルコール性肝硬変などが進行すると、肝不全に至り、浮腫を伴うことがあります。

肝臓は「アルブミン」という蛋白を生成しますが、肝臓の機能が低下すると、それを作れなくなります。
低栄養と一緒で、血液中のアルブミンが少なくなることで、血液中の水分を保つことができなくなり、血管外(間質)へ水分が漏れ出します。
また、肝不全では、門脈といって肝臓にある太い静脈の圧が上がります。(門脈圧亢進)
それによって同様に血管内から外へ水分が漏れ出し、下腿浮腫の原因になります。
そこまでの状態になってしまうと、残念ながらその機能を回復するのは難しいことが多いです。
心不全、腎不全同様、浮腫や腹水を軽減する目的で利尿剤を使うことがあります。
④ 甲状腺機能低下症
これもメジャーとはいえないかもしれませんが、喉にある、ホルモン産生臓器である甲状腺の機能が低下していると、浮腫の原因になります。
下腿浮腫のほかに、なんかだるい、やる気が出ない、などの症状があり血液検査をすると、甲状腺機能低下症だったという場合があります。

内服薬としてホルモン補充を行えば改善することが多いですが、その調整は一朝一夕にはいかず、数ヶ月単位で時間がかかります。
浮腫部分を指で押しても、凹まないことがほかの原因との大きな違いです。
⑤ 深部静脈血栓症
表在(皮膚に近い部分)の静脈ではあまり起こりませんが、深い部分の太い静脈が血栓(血の塊)で詰まってしまうと、その先へ血流が流れにくくなるため、静脈灌流不全により浮腫が生じます。
詰まった血栓が肺の血管のほうへ血流に乗って移動してしまうと、肺血栓塞栓症といって、命に関わる病気にたちまち変化してしまうこともあります。
これは、エコノミークラス症候群とメカニズムは一緒で、特に高齢者では同じ姿勢を取り続けることが多く、そのため血流が滞った太い静脈の一部に、知らぬ間に血栓が集積してしまうのです。
定期的に身体を動かすことが一番の予防で、もし血栓ができてしまった場合は、血栓を取り除くか溶かすかの治療があります。
通院が難しいと、現実的にはそう診断するのは簡単ではありません。
もし疑わしい場合には、抗凝固薬といって血液をさらさらにする内服薬で、血栓が溶けるのを待つことになりますが、一日二日で溶けるものではなく、時間がかかります。
静脈が物理的に閉塞するのが原因ですので、その詰まった側「片側」の浮腫であることが多いです。
⑥ 薬剤性
一つ前のコラムで話題にしましたが、高齢者になると多数の薬を飲んでいることも少なくありません。

普段よく使われている薬の中で、「浮腫」という副作用を引き起こすも多数あります。
代表的なものとして、
・Ca拮抗薬(降圧薬・特にアムロジピン)
・NSAIDs(鎮痛薬・ロキソプロフェン、セレコックスなど)
・ステロイド
・一部の糖尿病薬
・一部の抗精神病薬
などがあります。
このほかに、「悪性腫瘍」でも浮腫を生じることがあります。
悪性腫瘍に伴う下腿浮腫には、食事摂取不良による低栄養、腫瘍による静脈の物理的な圧排、リンパ灌流不全など、悪性腫瘍に関連する様々なメカニズムが合わさって生じます。
浮腫の治療
では、浮腫を良くするためには、どうしたらいいのでしょうか?
これまで述べてきた通り、まずは原因を特定し、その治療を行うことです。
ただ、繰り返しになりますが、通院が困難な高齢者にとっては検査を受けること自体が難しいことや、加齢に伴う浮腫であることも多く、これだ!という診断に至らないことも少なくありません。
訪問診療では、血液検査など、できる範囲で検査をして、その原因の特定を試みます。
薬剤性など何か疑わしければ、そのお薬を中止するなど、薬剤調整を行います。
原因がはっきりわからない場合、基本的には「加齢に伴うもの」と診断することが多いです。
内臓からくるものではなさそうだから、定期的に身体を動かすこと、リハビリを継続することが一番の治療ですよ、とお伝えしています。

原因が特定できない場合で、蜂窩織炎など浮腫による弊害がない場合は、特段治療は不要ですが、どうしてもということであれば、「利尿剤」頼みになります。
しかし完全に浮腫をなくすことは困難であることが多いほか、利尿剤は、特に高齢者では頻尿増悪のリスクになるため、注意が必要です。

高齢者の浮腫について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
まとめると、
1. 高齢者の浮腫は、「加齢からくる下腿浮腫」であることが多い
2. 浮腫軽減のためには、原因を調べ、その治療を行う
3. 原因が特定できなければ、定期的に身体を動かすこと、リハビリを継続することが一番の治療
ということになります。
来年も、月2本のペースで投稿を継続していきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。
それでは、良いお年をお迎えください。
特に年始には、お餅を喉に詰まらせないように、気をつけてくださいね。
お餅と誤嚥に関するこちらのコラムももう一度どうぞ。

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