骨粗鬆症の薬、飲んだほうがいい?
みなさん、こんにちは。
今日は骨粗鬆症についてです。
骨粗鬆症も訪問診療と関わりが深いです。
端的に言うと、ご高齢の方が多いからです。
どういう人が骨の薬を飲んだ方がいいか、その種類は?といったことを中心に解説していきます。
骨粗鬆症とは
ご存知の通り、骨粗鬆症とは、骨の量が減って骨が脆くなり、骨折しやすくなっている状態のことをいいます。
骨は本来、できたらそのまま、ではなく、骨の細胞が新しくできては壊れてを繰り返しています。
特に高齢になってくると、新しく細胞ができるスピードが落ち、壊れるスピードが上回っていくため、結果として骨の細胞が減少していきます。
骨折がなければ基本的に症状はありませんが、転んだりぶつけたりした際に骨折しやすくなります。
骨粗鬆症の原因
では骨粗鬆症はなぜ、どういった人に起こりやすいのでしょうか?
骨粗鬆症は大きく分けて「原発性骨粗鬆症」と「続発性骨粗鬆症」の2つがあります。
原発性は、年齢とともにくるもので、特に女性の閉経後のエストロゲンの急激な減少が関係しています。
男性も加齢に伴う各種ホルモンの減少により、骨量が減少していきます。
続発性は甲状腺など内分泌疾患が関係していたり、ステロイドの内服により生じたりするものがありますが、男女とも原発性が大半を占めます。
加齢と一言で済ませてしまえばそれまでですが、喫煙・飲酒が発症に関連しているほか、ステロイドを使用している人、家族歴のある人、骨折したことがある人、運動不足の人、カルシウム摂取不足の人、などがなりやすいと言われています。
骨粗鬆症の検査
ではどのように診断を行うのでしょうか?
一番有名な検査はDXAという、X線を使った骨密度の検査です。
骨密度の絶対値もそうですが、YAM(若年成人平均値)といって若年成人の骨量平均を100としたときの自分の骨量を用いて評価します。
細かいことは省きますが、このYAMが70-80(%)以下だと骨粗鬆症と診断することが多いです。
YAMが低いほど骨密度、骨量が少なく骨折しやすいことを示し、転倒のしやすさ、骨折歴などとあわせて、70-80を下回っている場合には基本的には治療をしたほうがよいとされています。
そのほか超音波や、MRI検査を組み合わせて診断を行うこともありますが、いずれにしても訪問診療での検査は難しいので、必要に応じて近くの医療機関で検査してきてもらう場合もあります。
骨粗鬆症の予防
特に高齢の方において、骨折を予防することは、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を維持する上ではかなり重要なことです。
高齢者の骨折では「大腿骨骨折」「腰椎圧迫骨折」が有名です。
※ 腰椎圧迫骨折
大腿骨を骨折してしまうと骨をボルトで固定したり骨頭を人工物に交換したりする手術が必要になることがあり、リハビリがとても大変です。
手術が終わって痛みがある程度楽になるまではろくに歩けませんし、その間、日に日に筋肉量が落ちていきます。
元通りの体力に戻るまで、月単位で時間を要します。
元通りすたすた歩けるようになるかどうかも保証できません。
腰椎圧迫骨折についても、手術をしないまでも腰痛に悩まされたり、足の痺れが生じたりと歩くのが大変になるため筋力や体力が落ちていきます。
こういった骨折は(色々な要因がありますが)寿命を縮めるというデータもあります。
一度骨折するとかばって転びやすくなりまた骨折したり、骨折を契機にがくっと体力が落ちてしまうことも少なくありません。
つらつら書いてきましたが、骨折を予防するために、骨粗鬆症を予防、治療することはとても大切なのです。
では骨粗鬆症を予防、進行させないために何が必要でしょうか?
- 喫煙、飲酒を控える
- 定期的に適度な運動をする
- カルシウム、ビタミンDを充分量摂取する
大きくこの3つが有効であることが知られています。
カルシウムは乳製品、ブロッコリーなどの野菜、ナッツなどに多く含まれ、ビタミンDは魚の脂などに多く含まれます。
食事から充分量摂取することが難しい場合はサプリメントを活用します。
骨粗鬆症のお薬
どういう人が骨粗鬆症になりやすく、どういった場合に骨粗鬆症の治療をしたほうがいいか、お分かりいただけたと思いますので、最後にお薬の内容についてです。
骨粗鬆症の病態によって、骨細胞が壊れていくのを抑制する薬がいいか、骨細胞が作られるのを手助けする薬がいいかが違いますが、ざっくり大きく有名どころではいずれも前者のこの3種類です。
- 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(ラロキシフェンなど)
- 活性型ビタミンD3(アルファカルシドールなど)
- ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸など)
女性の閉経後早期には、骨細胞が壊れていくのを抑制する選択的エストロゲン受容体モジュレーターが用いられ、長期投与が可能です。
高齢者で骨細胞が壊れていっている場合(いわゆる原発性骨粗鬆症)には、骨形成を促進し骨密度を上昇させ、椎体骨折を抑制する効果のある活性型ビタミンD3製剤が使われます。
大腿骨骨折を抑制する効果は示されていませんが、こちらも長期投与における安全性が示されています。
ビスホスホネート製剤は、骨密度を上昇させ大腿骨を含む骨折の抑制効果がありますが、起床後の空腹時にコップ1杯の水で内服する必要があり、月1回ないし週1回という飲み忘れのリスクを伴うお薬です。
内服が難しい場合は注射製剤がありますが、顎骨壊死などの副作用の報告があるほか、10年以上にわたる長期投与には向いていません。
活性型ビタミンD3とビスホスホネートを併用する場合もあります。
いかがでしたでしょうか?
まとめると、ADL・QOLを低下させないために骨折を予防することが大切で、そのためには骨粗鬆症を早期診断し必要に応じて生活改善や内服での治療を行うことが重要です。
高齢になるといくら気をつけていても転んでしまうものです。
転んだときに極力大ごとにならないよう、できる準備をしておきたいものですね。
それでは、また。