食欲がない夏 ― 無理に食べなくていい、でも気をつけたいこと
みなさん、こんにちは。
暑くなってきましたね。
暑さが厳しくなる夏は、食欲が落ちやすい季節です。
特に訪問診療を受けている80代・90代の高齢者では、「食べる量が減った」「そうめんなどのあっさりしたものばかり食べている」という状況が見られます。

一時的な食欲低下であっても、必要な栄養や水分が不足すると、体力の低下や脱水症、熱中症につながることがあります。
今回は、特に訪問診療を受ける高齢者の食欲低下と栄養管理についてお話しします。
夏場はなぜ食欲が落ちるのか?
夏場は気温や湿度の上昇により、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
また、発汗による水分やミネラルの喪失、睡眠不足、冷房による冷えなども食欲低下の原因になります。
高齢者ではもともと食欲や喉の渇きを感じにくくなっているため、気付かないうちに栄養不足や脱水が進行することがあります。
食欲低下が続くとどうなる?
食事量が減ると、エネルギーだけでなく筋肉を維持するためのたんぱく質も不足しやすくなります。
その結果、
・体重減少
・筋力低下
・転倒リスクの増加
・免疫力の低下
・感染症にかかりやすくなる
といった問題が生じる可能性があります。

特に高齢者では、短期間の体重減少がその後の生活機能の低下につながることも少なくありません。
夏場の食事で意識したいポイント
1.少量でもたんぱく質を摂る
食欲がないと、そうめんやおかゆだけで済ませてしまうことがあります。
しかし、炭水化物中心の食事では筋肉の維持に必要なたんぱく質が不足してしまいます。
以下のような食品を一品加えることをおすすめします。
・卵
・豆腐
・納豆
・ヨーグルト
・鶏肉
・白身魚
・ツナ缶
「おかゆ+温泉卵」「冷奴+そうめん」など、手軽な組み合わせでも十分効果的です。
2.食べやすい形で栄養を補う
一度にたくさん食べる必要はありません。
・プリン
・ヨーグルト
・ゼリー
・茶碗蒸し
・アイスクリーム
など、口当たりの良い食品を活用しましょう。
栄養補助食品を利用するのも有効な方法です。
3.こまめな水分補給を心掛ける
脱水は食欲低下をさらに悪化させます。
喉が渇いていなくても、こまめに水分を摂ることが大切です。
水や麦茶のほか、経口補水液、スープなども活用していきましょう。

注意した方がよいサイン:
・食欲低下が2週間以上続く
・急激な体重減少がある
・発熱がある
・強いだるさが続く
・水分も十分に摂れない
・むせ込みが増えた
もしもこういった症状もあわせて出てくる場合は、「ただの夏バテなのか?」「何か原因がないのか?」も調べていきます。
夏バテではなかった〜高齢者の食欲低下の原因〜
実は、食欲低下の背景に、さまざまな病気が隠れていることがあります。
・感染症(肺炎、尿路感染症など)
・がん
・心不全
・腎不全
・肝疾患
・認知症
・うつ病
・便秘
特に高齢者では、発熱や痛みよりも「食欲低下」が病気の最初のサインとなることがあります。
服用中の薬が原因となる場合もあるので、薬が増えた後から食欲が落ちた場合は注意が必要です。
その他、入れ歯が合わない・虫歯や歯周病があるなど、お口のトラブルも食欲低下の原因となります。

訪問診療のリアル
実際の訪問診療の現場で食べられない患者さんを見た際、まずは上に挙げたような原因がないかを調べます。
血液検査で異常な値がないかを確認したり、普段飲んでいる薬の見直しを行います。
薬を過剰に飲みすぎていないか、逆に飲み忘れがないかも確認します。

普段から様子を見ている家族やヘルパーさん・看護師さんから聞く普段の様子なども大切です。
原因がこれ!とはっきりすれば良いのですが、実際は色々と調べても、原因がないことも多いです。
その場合、食欲低下は加齢による変化、と捉えます。
年齢を重ねると、胃腸の動きがゆっくりになり、少量で満腹感を感じやすくなります。
また、味覚や嗅覚が低下することで食事の楽しみが減り、その結果、食欲低下につながることもあります。
期間を決めて点滴での治療を行うこともありますが、口から水分を摂れている方にはあまりお勧めはしません(コラム:終末期の点滴も参照ください。)
また、点滴は根本的な解決方法ではないため、点滴をしたからといって元気になるわけでもありません。
希望がある場合、胃瘻(いろう)や経鼻経管栄養、中心静脈栄養という代替栄養を開始することもあります。
代替栄養を行わず自然な形で過ごすことを選ばれた場合は、終末期として対応していくこととなります。
まとめ
高齢者における夏場の食欲低下や、その原因・対策について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
最後は少しシビアな話になってしまいました。
夏場の食欲低下は誰にでも起こり得ますが、高齢者では栄養不足や脱水が重症化につながることがあります。
無理にたくさん食べる必要はありませんが、少量でもたんぱく質を意識し、水分補給を心掛けながら体調の変化を見守ることが大切です。
訪問診療の患者さんには「食べられる内に食べたいものを食べてください」とお話しするようにしています(もちろん、病気のため食べるものの制限がある場合は、事前に主治医や看護師と相談するようにしましょう。)
食欲は健康のバロメーターです。
それでは、また。
