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肝炎ウイルス検診 受けるべし?

[2025.08.31]

こんにちは。

 

今回は、肝炎ウイルス検診についてです。

 

訪問診療をしていると、肝炎ウイルス(B型・C型肝炎ウイルス)検診の案内がきている方がいます。

 

これは先生やってくれるんですか?受けた方がいいんですか?という質問をいただきます。

 

訪問診療が必要な高齢者において、肝炎ウイルス検診は不要、というのが当院の考え方です。

 

なぜ受けなくていいのか?その理由を紐解いていきましょう。

 

採血のイラスト(健康診断)

 

 

肝炎ウイルスとは?

まず肝炎ウイルスとは、肝臓に炎症を起こすウイルスの総称で、A型からE型まで存在し、感染経路や症状、重症度が異なります。

 

A型・E型は主に汚染された水や食品から感染します。

 

一方で、B型・C型は血液や体液の接触により感染し、輸血出産刺青性交渉針刺し事故といった感染経路が知られています。

 

輸血をしている患者のイラスト

 

A型・E型に比べ、B型・C型は自然治癒する可能性が低く、ウイルスが体内からいなくならないことによって慢性の炎症、つまり慢性肝炎を引き起こすことがあります。

 

現在の輸血製剤に肝炎ウイルスが含まれることはほとんどなくなりましたが、一昔前は輸血製剤の中に一定の確率で肝炎ウイルスが含まれ、輸血治療を受けた人が肝炎ウイルスに感染するといったことがそれなりにありました。

 

 

慢性肝炎と肝硬変

ではB型・C型肝炎ウイルスに感染することで慢性肝炎になると、どうなってしまうのでしょうか?

 

初期段階では、ほとんど症状はありませんが、倦怠感食欲不振疲労感微熱などが出現することがあります。

 

  

 

風邪に似た症状ですが、自然に治らないのが特徴です。

 

肝臓の炎症が続くことにより、血液検査では肝臓の数値に異常が見られ、場合によっては黄疸(血中ビリルビン濃度の上昇)が出てきます。

 

肝臓の炎症が長期に続くと、次第に「肝硬変」といって肝臓の細胞が壊れに壊れ、肝臓の本来の機能を十分に果たせなくなってきます。

 

このため、黄疸の進行や、下腿浮腫腹水(お腹が張る)、吐血(食道静脈瘤による)といった症状が出現します。

 

黄疸のイラスト

 

それが放置されることはないと思いますが、さらに進行すると、意識障害をきたし、肝臓が機能しないことによってまもなく死に至ります。

 

また、肝硬変がある人は肝臓の癌=肝胞癌ができやすいことが知られています。

 

つまり、B型・C型肝炎ウイルスによって慢性肝炎になると、こういった肝硬変や肝臓癌発症のリスクが上がるのです。

 

不健康な肝臓のキャラクター

 

 

肝炎ウイルス検診とその必要性

さて、検診の話に移りましょう。

 

輸血等によって感染したB型・C型肝炎ウイルスがなぜ怖いか、わかっていただけたでしょうか。

 

肝炎の初期には症状がないか軽いため、気づいたときには進行していたというケースがよくあります。

 

そのため、これらのウイルスが体内にいないかどうか、症状のないうちに調べよう、というのがこの検診の趣旨になります。

 

ただ、ひとつ重要なポイントがあります。

 

それは、B型・C型肝炎ウイルスに感染してから、肝硬変や肝臓癌を発症するまで、通常20〜30年ほどかかるということです。

 

 

残酷な事実ですが、高齢者において、訪問診療導入から亡くなるまでの期間は平均をとると、多めに見積もっても数年です。

 

また、通常の血液検査を行うだけで肝炎があるかどうかはわかります。

 

つまり、訪問診療を受ける大半の患者さんにおいて、この検診によって今、肝炎ウイルスが見つかっても、それが肝硬変や癌となって生命を脅かすには及ばないのです。

 

これが、訪問診療が必要な高齢者において、肝炎ウイルス検診は不要と当院が考える所以です。

 

 

慢性肝炎の治療

参考までに、若くしてB型・C型肝炎ウイルス感染が指摘された場合、どのように治療するかも説明します。

 

治療についてはB型とC型とで大きく異なります。

 

B型の場合

現代の医療ではウイルスを完全に0にするのは困難で、肝炎を抑制し肝硬変や肝臓癌への進展を極力予防することが治療の目標になります。

 

核酸アナログ製剤という飲み薬や、適応は限られますがインターフェロン療法といった治療があります。

 

C型の場合

B型と違い、治療によりほぼ根治が可能です。

 

抗ウイルス薬を8〜12週間内服することが一般的で、こちらも適応は限られますがインターフェロン療法も行われることがあります。

 

薬のイラスト「粒状の薬・セット」

 

 

治療コストと発癌リスク

B型の場合は、根治が困難のため、基本的には治療が永続されます。

 

薬代だけみると、年間で10万円前後での自己負担によって治療が継続されます。

 

C型の場合は、治療期間が限られるものの、薬価は高く、トータルで200〜300万円程度必要です。

 

ただし高額療養費制度によってトータル20万円程度の自己負担で治療できることになります。

 

裏を返すと、それぐらいの税金が治療に注ぎ込まれることを意味します。

 

自己負担額はある程度抑えられても、B型・C型肝炎ウイルスの治療には押し並べて高額な費用・税金がかかるということです。

 

 

基本的には、将来の肝硬変や肝癌発症抑制効果の恩恵を受けられる若い人が受ける治療になります。

 

訪問診療を受ける80代の患者さんにとって、これから治療をすることによって恩恵を受けられる可能性はかなり低く、多額のコストには見合わないだろう、ということです。

 

 

最後に

肝炎ウイルス、肝炎、検診、治療などについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

今回のコラムのtake home messageは以下の2つです。

 

① 訪問診療を受ける大半の患者さんにおいて、この検診によって今、肝炎ウイルスが見つかっても、それが肝硬変や癌となって生命を脅かすには及ばない

 

② 治療コストも考慮するとさらに、高齢患者さんにとって肝炎ウイルス検診や肝炎治療は意味をなさない可能性が高い

 

 

松戸市では、「80歳までの5歳刻み」の人に肝炎ウイルス検診のお知らせがくるようです。

 

80歳はちょっと高齢すぎやしないかな、と思います。

 

ちなみに当院は肝炎ウイルス検診の指定医療機関ではないため、肝炎ウイルス検診は実施していません。

 

 

それでは、また。

 

 

 

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