痛み止めのイロハ
そろそろ三寒四温の季節になってきました。
桜が待ち遠しいですね。
花粉は嫌ですが。
さて、今回は痛み止めの種類や使い方についてお話しします。
訪問診療を利用するような高齢者になると、足や腰、いろんなところに痛みが出てきます。
いろんな種類の痛み止めがありますが、どんなときにどんなものを使ったらいいのか?使うときの注意点などを解説していきます。
アセトアミノフェン
カロナールという製品名です。
聞いたことがあるのではないでしょうか。
どんな人にとっても一番使いやすく、手軽な痛み止めです。
飲み薬はもちろん、坐薬や点滴の製剤もあります。
効果は比較的マイルドで、一日2-4回と決めて飲む場合もあれば、痛いとき(発熱時も)に頓服で使う場合もあります。
受診し処方してもらうこともできますし、ドラッグストアで購入することもできます。
1回量は400-600mgで、体重×10mgが目安です。
代表的な副作用は肝障害で、多量に慢性的に内服していると肝臓にダメージが出ることがあるほか、もともと肝臓が悪い人には使いにくいです。
ロキソプロフェン
ロキソニンという製品名です。
こちらも有名ですね。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:エヌセイズと読みます)に分類されます。
アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジンの合成を抑制することで解熱鎮痛作用を発揮することは覚えなくて結構です。
ドラッグストアで購入することができ、比較的手軽に使える解熱剤のひとつです。
飲み薬がメインですが、ジクロフェナクというロキソプロフェンの親戚にあたる坐薬があったり、ロピオンというこちらもロキソプロフェンの親戚にあたる点滴があったりします。
整形外科的には湿布や塗り薬もよく使われます。
効果は中程度、一日何回と決めて飲む場合もあれば、痛いとき(発熱時も)に頓服で使う場合もあります。
喘息持ちの人や腎臓が悪い人には使用を避けることが多く、長期服用により胃が荒れるため、必要に応じて胃薬を併用します。
余談ですが、ロキソプロフェンと一緒にレバミピドという弱めの胃薬が処方されるケースをよくみますが、胃潰瘍を予防するには一番強い胃薬であるPPI(プロトンポンプインヒビター)でないと効果がないことが分かっています。
セレコキシブ
セレコックスという製品名で、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の一種です。
ロキソニンの親戚ですが、COX-2を選択的に阻害するため、ロキソニンに比べ、胃腸障害の副作用が少ないのが特徴です。
長期に内服するのであれば、ロキソプロフェンよりセレコキシブのほうが向いているでしょう。
一方で、心筋梗塞や脳卒中の副作用が報告されており、もちろん多くはないですが、素因のある人には注意が必要です。
整形外科的な慢性疼痛に使うことが多いです。
持続時間が長いため一日2回の内服で、こちらはドラッグストアでは購入できないため医師の処方が必要です。
トラマドール
トラマールという製品名です。
がん疼痛や整形外科疾患などの慢性疼痛の治療に用いられる非オピオイド鎮痛剤です。
アセトアミノフェンやNSAIDsと比べ、効果が強いのが特徴です。
少ない量から開始し、何倍にも増やしていくことができますが、トラマドールを開始する前に、アセトアミノフェンやNSAIDsを試してからがよいでしょう。
セレコキシブ同様、ドラッグストアでは購入できないため医師の処方が必要です。
一日1回で効果が持続するワントラム、一日2回内服するツートラム、アセトアミノフェンとの合剤であるトラムセットなどがあります。
副作用としては眠気や吐き気、便秘などがあります。
オピオイド(麻薬)
原則、悪性腫瘍、がんによる痛みにしか使えませんが、これまでに挙げた痛み止めでも痛みがコントロールできない場合、オピオイドを使用します。
フェンタニル、オキシコドン、モルヒネなど様々な種類があります。
薬によっては呼吸苦を抑える作用もあったりします。
飲み薬や坐薬、注射、貼り薬などがあり、経口摂取ができない人にも使えます。
癌の終末期になると、痛みを含む苦痛を極力減らすことが治療の最優先事項になるため、痛みがコントロールできるまで、オピオイドの量を増やします。
トラマドールと同様、眠気・吐き気・便秘などの副作用があり、これらの副作用に対してはさらに吐き気止め、緩下剤を使用し調整します。
神経障害性疼痛に対する鎮痛
番外編ですが、椎間板ヘルニアや帯状疱疹、三叉神経痛など、解剖学的な「神経」が直接、何かに触れたりしてビリッという鋭い電撃のようなしびれ感・痛みに対して、プレガバリン(製品名 リリカ)・ミロガバリン(製品名 タリージェ)といったカルシウムイオンチャネル阻害薬を使うことがあります。
神経においてカルシウムイオンの流入を抑えることで痛み、しびれを軽減するという作用です。
睡眠障害、めまい、頭痛、浮腫などが副作用として報告されています。
投与量の急な増減は、めまいやふらつきを生じるため、量の調節の際には徐々に行う必要があります。
このほか、神経ブロックという注射や、局所麻酔薬を使うこともあります。
まとめると、痛みの原因にもよりますが、
・まずはアセトアミノフェンやロキソプロフェンなどNSAIDsから
・長期に内服するのならセレコキシブ
・それでも痛みが残存するようならトラマドールの併用や増量
・神経障害性疼痛であればプレガバリンやミロガバリンを併用 |
という具合に使い分けるのがよいでしょう。
いくつかの痛み止めの種類について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
前提として、痛みの原因を調べ、根本的な解決方法がないか検討することが大事です。
原則として痛み止めは効果が弱いものから開始し、強いものへ変更していきます。
痛みのコントロールが不十分の場合、1種類のみでなく、複数の種類を組み合わせて使うことが重要です。
また、痛み止めといっても副作用もあるため、漫然と使用し続けるのではなく、痛みがコントロールできているのであれば、減らしたりやめたりできないかも都度検討するのがよいでしょう。
痛みや痛み止めについて疑問や相談があれば、診察時にお気軽にお声掛けください。
それでは、また。