レビー小体とパーキンソンと認知症
みなさん、こんにちは。
日本海側では大雪になっていますが、訪問診療のことを考えると、関東では積もらないことを祈るばかりです。
さて、今回は三大認知症最後の病気である「レビー小体型認知症」について解説します。
レビー小体型認知症とは?
文字の通り「レビー小体」という異常な物質が脳の神経細胞に溜まってくることで発症します。
実はこのレビー小体はパーキンソン病の原因でもあります。
レビー小体型認知症とパーキンソン病を合わせて「レビー小体病」と呼ばれます。
レビー小体が溜まる場所によってパーキンソン病と先に診断されることもあります。
パーキンソン病と診断された結果この認知症が見逃されることもあり、注意が必要です。
現在のところ何故レビー小体が脳に溜まるのかは分かっていません。
男性に多く発症する傾向がある他、頭部への外傷や慢性的なストレス、うつ病なども発症に関連があると考えられています。
検査・診断
基本的には他の認知症と同様の検査を行います。
一般的な検査(身体診察や採血など)を行った上で、頭の画像検査(CTやMRI)を行うことで、頭の病気がないかどうかや、他の認知症も合わさっていないかの確認を行います。
その他、レビー小体型認知症で特徴的な検査としては「123I-MIBG心筋シンチグラフィー」 という検査があります。
これは心臓の自律神経の機能を調べる検査です。
自律神経の調子が悪くなるレビー小体病では、比較的軽症の時期からこの検査で異常をきたすことが知られています。
その他、睡眠ポリグラフィという睡眠中の様子を調べる検査で筋肉の緊張が見られることがあります。
こういった検査や、レビー小体型認知症らしい症状との組み合わせで診断をすることができます。
症状
レビー小体型認知症は他の認知症と比べて多彩な症状が出てくることが特徴です。
1. パーキンソン症状
レビー小体型認知症では、パーキンソン症状が初期の段階から起こります。
具体的には、
・手足の筋肉がこわばり動かしにくくなる
・手足が震える
・動作が緩慢になる
などの症状をパーキンソン症状と言います。
姿勢の維持が困難になるので転倒しないよう注意が必要です。
また症状が進行すると飲み込みにくいなど嚥下障害を引き起こし誤嚥性肺炎を繰り返すこともあります。
2. 認知機能障害
物忘れや判断力・理解力の低下などの症状が現れますが、初期にはあまり目立ちません。
受け答えや判断力に問題がない状態と、ぼーっとしていて反応が薄い状態を周期的に繰り返します。
3. 幻視(幻覚)・幻聴
「知らない人が立っている」「壁に虫がいる」「誰かが耳元で話しかけてくる」「家具が人の姿に見える」などリアルな幻視・幻聴症状が出ることがあります。
あまりにリアルな幻視のため本人自身も病気の症状だと気が付かないこともあります。
4. レム睡眠行動異常症(RBD)
常に体がリラックスできない状態のため、寝ている時の異常行動を起こすこともあります。
寝ているときに大声で叫んだり、手足を動かして暴れる、などの症状が起こることがあります。
5. 自律神経症状
便秘や尿失禁、起立性低血圧など自律神経失調の症状が出ることがあります。
また、病気の初期から何事にもやる気がでなくなるなど、うつ症状が出ることもあります。
アルツハイマー型認知症との違い
典型的なアルツハイマー型認知症は「物忘れや置き忘れ、しまい忘れ」といった短期記憶障害の症状がメインで、数年単位でゆるやかに症状が進んでくることが特徴です。
一方、レビー小体型認知症は、物忘れ症状が波のように変化します。
しっかりしているときもあるため病気と思われないことがあったり、初期では認知機能の低下が目立たない場合もあります。
「物忘れ」だけでなく「すくみ足(なかなか一歩めが出ない)や手足の震え、動きのぎこちなさ」であったり、「頑固な便秘や頻繁な立ちくらみ・失神(自律神経失調の症状)」や「リアルな幻視・夢か現かわからないような体験」などが「物忘れ」と一緒に出てくることが特徴です。
治療
レビー小体型認知症もアルツハイマー型認知症と同じく、脳内伝達物質の「アセチルコリン」の量が減っています。
そのため「コリンエステラーゼ阻害薬」や「メマンチン」などの薬が効果的なこともあります。
アルツハイマー型認知症の場合はどの薬も(軽症〜重症での多少使い分けはあるものの)適応ではありました。
しかし、レビー小体型認知症では保険診療上は「ドネペジル(アリセプト)」という薬のみが使用可能となっています。
重症の認知症の場合は「飲み込みにくさ・むせ」がひどくなる恐れもあるため使用しないことも多いです。
幻覚症状が強い場合は抑肝散という漢方やその他、気分を落ち着かせる薬などを試していただくこともあります。
いかがでしたでしょうか。
これまで三大認知症について解説してきました。
いずれの認知症についても完治はできないものですし、生きていれば多かれ少なかれいずれは発症するものになります。
ただ、中には治せる病気が隠れている場合もありますし、「何かおかしいな?」と自分、周囲が気がついた時には早めに医師に相談することをお勧めします。
それでは、また。